歯周病で下がった歯茎や骨を再生したい!最新の治療方法とは
歯科お役立ちコラム
2016.09.26
今回は、歯周病によって失われた骨を再生させる、最新の歯科治療についてまとめました。歯周病にお困りの方や不安な方は、是非参考にして頂ければと思います。
歯周病によって歯茎や骨が下がる原因
歯周病は、歯茎の炎症や出血が起こる歯肉炎と、影響が歯茎だけに留まらず、骨にまで達する歯周炎に分けられます。
どちらも主な原因は、口腔内に存在する細菌であり、歯のお手入れ不足やタバコ、ストレスや遺伝など、要因は様々です。
<原因1>虫歯と歯周病の関連性
「虫歯になりやすい人は歯周病になりにくい」という噂を耳にしますが、恐らく、この言葉は、虫歯を発生させる菌と歯周病に関与する菌が別の種類であることから言われるようになったと考えられます。
しかし、歯周病の初期段階である歯茎の炎症の原因は、虫歯の原因と同じプラーク(歯垢)ですので、必ずしも虫歯になりやすい人が歯周病になりにくいというわけではありません。
お手入れ不足が改善されなければ虫歯と歯周病、その2つが同時に進行する危険性があります。
<原因2>強すぎる歯磨き
皆さんは普段、どんな歯ブラシを使っていますか?
市販されている歯磨きには、やわらかめ、ふつう、かためという3つのタイプがありますが、このうち「かため」を使っている人は要注意です。
硬い歯ブラシは、効率的に歯の汚れを落とすことができますが、歯茎のような軟組織には刺激が強すぎることがあります。
また、やわらかめやふつうの歯ブラシを使っている場合でも、ブラッシングをする力が強すぎると、歯を傷つけるだけでなく、歯茎を下げてしまう原因にもなります。
歯茎が下がるのを予防するため、かための歯ブラシを避け、歯を磨く際も適度な力をかけるようにしましょう。
歯の汚れをしっかりと落とそうとする気持ちはとても良いことなのですが、力みすぎてしまうと軟らかい口腔粘膜に悪影響が及ぶことがあるのです。
<原因3>噛み合わせの悪さや歯ぎしりによって負荷がかかる
正常な噛み合わせであれば、ものを噛んだときに歯列全体に均等な力がかかるようになっています。
しかし、人の顎の力はとても強いので、噛み合わせが悪いと特定の歯に負担がかかります。不均等な力がかかってしまうと、いくら頑丈なエナメル質でも、いろいろな悪影響を及ぼします。
歯は歯茎によって支えられていますので、その圧力は結果的に歯茎にも及ぶことになります。そうして歯茎に炎症が生じて歯周病を招き、歯茎を下げることとなるのです。
その他、歯ぎしりや食いしばりといった習慣も、歯茎を下げる原因になります。これらも噛み合わせの悪さと同様、特定の歯や歯茎に強い力がかかることで、歯茎が下がっていきます。
<原因4>小帯の付き方がよくない
私たちの口腔内には、小帯と呼ばれる紐のような軟組織が存在しています。具体的には舌小帯や頬小帯と呼ばれるもので、これらは舌と歯茎、あるいは頬粘膜と歯茎をつなぐ役割を果たしています。
その小帯がしっかりと付きすぎていると、歯磨きがしにくいだけでなく、歯茎が引っ張られてしまうこともあります。その結果、歯茎が下がってしまう一因となるのです。
<原因5>加齢によって、どうしても下がりがちに
歯茎が下がる原因として、誰もが避けられないのが加齢です。
私たちの歯茎は年齢を重ねるごとに、下がっていく傾向にあります。もちろん、日々のオーラルケアを徹底することである程度は予防できますが、それでも歯茎が下がってくることはあります。
失った骨や歯茎が戻るかも!?それを可能にする最新の歯科治療
重度の歯周病になると、細菌の出す酸によって顎骨が溶かされはじめ、同時に、顎骨の上に被さる歯茎も下がるため、見た目にも変化がうまれます。
歯周病に対する処置として、歯茎を切開し、根っこに付着した歯石や細菌感染のある骨を除去する方法がありますが、顎骨の量を元に戻すことは難しいとされていました。
では、最新の治療方法にはどのようなものがあるのかを詳しくみていきましょう。
1. エムドゲイン法
エムドゲインゲルという骨を再生させる薬を、骨を失った部位に塗布し、本来備わっている骨の再生能力を促す方法です。
治療手順は、まず麻酔を行い、歯茎を切開します。根っこに付着する歯石や細菌感染の見られる部分を除去し、清潔な状態にした後、エムドゲインゲルを塗布します。その後、切開した部位を縫合して終了となります。
エムドゲイン法の治療期間
エムドゲイン法の処置は1回で終わります。
しかし、処置を行った日から約1日~3日後に消毒、10日~14日後には抜糸が必要になります。
抜糸までの間は、歯ブラシを部位に当ててはいけないため、歯科医院で汚れを取り、清潔な状況を保たなくてはなりません。
また、2ヶ月~3ヶ月後には、骨の再生を確認する為に検査を行い、その後も、再び骨が下がらないよう定期的なメンテナンスが必要となります。
エムドゲイン法の費用
エムドゲイン法は、保険適用ではありません。自由診療となるため、歯科医院によって費用に差がうまれます。相場は、約5万円~15万円です。
エムドゲイン法の注意点
全ての処置にいえることですが、効果には個人差があり、処置を受けたからといって、必ずしも骨が再生されるとは限りません。エムドゲイン法の注意点を以下にまとめました。
・骨が部分的に下がっている場合は、効果が期待できるが、全体的に下がっている骨には効果は発揮されない。
・歯石や細菌感染の部位を除去することで歯茎が引き締まるので、処置前よりも歯茎が下がる可能性がある。
・重度の糖尿病や骨粗鬆症による長期間の薬の服用がある場合は、処置が行えない。
・喫煙習慣のある場合は、効果が発揮されない可能性がある。
2. GBR法
確保されたスペースに自家骨や人工骨を盛って再生を促す方法です。
治療手順は、麻酔をして歯茎を切開した後、粉砕した自家骨や人工骨を盛り、そこをメンブレンとよばれる特殊な膜で覆います。その後、歯茎を縫合して終了となります。
GBR法の治療期間
粉砕した自家骨や人工骨は、約半年で自分の骨に置き換わります。
消毒や抜糸までの期間は、エムドゲイン法と変わりはなく、骨再生の検査も必要となります。
GBR法の費用と注意点
GBR法もエムドゲイン法同様、保険適用ではありません。相場は、約10万円~15万円となります。GBR法の注意点を以下にまとめました。
・上顎の奥歯には、GBR法が対応できない場合がある。
・手術した部位の貧血が起こる危険性があるため、睡眠時に骨を盛り足した部位を下にしてはいけない。
・盛り足した部分は柔らかく、変形するとその形に固まってしまうので、舌や指、歯ブラシ等で触れてはいけない。
・重度の糖尿病や骨粗鬆症など、処置が受けられないケースも存在する。
・喫煙習慣がある場合は、成功率が格段に減る。
3. 遊離歯肉移植術(FGG)
遊離歯肉移植術(FGG)とは、歯肉が退縮してしまった部分に、別の部位から採取した歯肉を移植する歯周外科処置です。
歯肉は表面から順番に、上皮組織・結合組織・骨膜の3つの層でできています。この遊離歯肉移植術(FGG)は上皮組織と結合組織の2層をまとめて移植するのが特徴です。
術後、歯肉はしっかりと安定しますので、歯肉減退による歯磨きの際の痛みが無くなり、見た目のガタガタも目立たなくなります。
遊離歯肉移植術(FGG)の治療期間
遊離歯肉移植術は、施術後1週間程度で抜糸を行います。移植した遊離歯肉が安定するのは、施術後数ヵ月が経過してからです。
遊離歯肉移植術(FGG)の注意点
上顎の内側の歯肉と、外から見える歯肉では、その色に違いがあることがほとんどです。
歯肉の上皮ごと移植する遊離歯肉移植術では、移植後の色調が周囲と調和せず、よく見ると違いがわかってしまうことがあります。
審美性の改善を目的とするケースでは適用が難しいことがありますので、注意が必要です。
4. 結合組織移植術(CTG)
結合組織移植術とは、先に紹介した遊離歯肉移植術(FCG)と同様に、歯肉が退縮してしまっている箇所に、口蓋から歯肉を採取して移植する方法です。
遊離歯肉移植術(FCG)との違いは、上皮組織を残すことです。上皮の下にある結合組織という部分だけを移植するため、上皮ごと移植するのに比べて歯茎の色の違いが目立たなくなるのが特徴です。その分、より高度な技術が必要になります。
結合組織移植術(CTG)の治癒にかかる期間
抜糸は1~2週間ほどで行いますが、傷がしっかり治るまでには2~3ヵ月を要します。
5. 小帯形成術
小帯形成術とは、大きすぎたり強すぎたりする小帯に対して行う手術です。小帯形成術によって小帯の状態が正常となることで、プラークコントロールがしやすい口腔環境を整えます。
小帯形成術は、施術後1週間程度で抜糸を行い、数週間から数ヵ月後には粘膜の状態も落ち着きます。
最新の骨再生治療で、インプラント治療を可能にする
歯周病などで骨を失うと、インプラント治療が受けられない可能性が高くなってしまいます。インプラント治療には十分な顎骨の厚みが必要であるため、重度の歯周病によって骨が少なくなっている場合だと難しく、処置後のトラブルが起こる確率も大幅に増えてしまいます。
事前に骨再生治療をすることで、安心してインプラント治療を行えるようになり、トラブルを回避できるためインプラント本体の寿命も延びます。
歯周病によりインプラント治療を諦めているという方は、是非一度歯科医院にご相談下さい。