精密根管治療の特徴まとめ~費用・器具・薬剤など5つの違い~
歯科お役立ちコラム
2016.09.23
歯の神経を取るための根管治療。
使用する器具や機材、薬剤など、行われる治療のレベルで、歯の寿命や治療後に起こり得るトラブルの発生率にも違いがあります。
今回は、精密根管治療と通常の根管治療の違いについて詳しくまとめてみました。是非参考にして頂ければと思います。
精密根管治療と通常の根管治療の違い
「神経を取る」という目的は、どちらも同じであることから、保険適用である通常の根管治療で充分なのでは?と疑問に感じる方も多いかもしれません。
しかし実際は、精密根管治療を受けた方が、最終的には患者様にとって良い結果をもたらすのです。その理由として、精密根管治療と通常の根管治療の違いを以下にまとめました。
1. 費用
保険適用である通常の根管治療に比べ、精密根管治療を行う場合、治療費は自費負担となることがほとんどです。使用する器具や機材、薬剤が異なるためです。
精密根管治療の費用
精密根管治療は、自費負担である場合が多いことから、歯科医院によって費用に違いがあります。治療対象である歯の根っこの数で左右され、相場は、約7万円~15万円で、1本20万円以上する歯科医院もあります。
また、初回ではなく、過去に根管治療を受けた歯が対象である場合は、さらに費用が高くなる場合もあります。
通常の根管治療の費用
保険適用である通常の根管治療の費用は、1本当たり数千円です。保険の負担割合によって違いが生まれます。
2. 治療時間と通院回数
通常の根管治療では、1回につき約30分程度の治療を平均4~5回通院して行い、難しい場合だとそれ以上来院が必要になる場合があります。
精密根管治療の場合では、細かく治療を進めるため、1回の治療は約60分~90分と長く、通院回数は1~3回と比較的少なくなります。
3. 検査・診断
治療を行う前の検査で、歯の根っこの構造を把握し、スムーズで適切な治療ができるよう計画を立てます。
精密な根管治療の場合は3次元CTスキャン、通常の根管治療の場合であれば、2次元レントゲンを使用し撮影します。
3次元CTスキャン
精密根管治療の検査で使用する3次元CTスキャンは、歯の内部を立体的に撮影でき、根っこの長さ、太さ、奥行き等を正確に把握することが可能です。
また、根尖病変とよばれる歯根の先の膿が溜まった際に、平面のみのレントゲン写真ではぼんやりと黒く映る程度ですが、3次元CTスキャンでは立体的に発見でき、精密な診断・治療が行えます。
2次元レントゲン
多くの歯科医院で使用される平面状のレントゲン写真です。神経や金属類の有無、全体的の状況を大まかに把握することが可能です。
しかし歯の根っこの構造を正確に映し出すことは難しく、術者である歯科医師の経験や技術によって治療の成功度が左右されやすいです。
4. 器具・機材
治療に使用する器具や機材は、治療の成功度を左右する重要なポイントとなります。
精密根管治療では、高性能マイクロスコープやニッケルチタンファイルを使用しますが、通常の根管治療の場合では、目視、または拡大ルーペを用いて、一般的なファイルでの治療がほとんどです。
高性能マイクロスコープ
歯科用大型顕微鏡であるマイクロスコープを使うと、歯の内部だけでなく、目視では見えないような根っこの奥深くまで、鮮明に見ることができます。
治療前の検査で得た情報を元に、歯の内部を探り、細かなヒビや破折の有無をチェックし、根尖病変の原因である神経の取り残しがないよう慎重に治療を進めて、トラブルの起こるリスクを最小限に抑えます。
ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)
ファイルとは、神経を除去する為に歯の根の中に入れて使用する道具です。
通常の根管治療で使用するステンレスファイルとは違い、精密根管治療で使用できるニッケルチタンファイルは、柔軟性があるため、入り組んだ内部であっても、ファイルの先端を隅々まで行き届かせることができます。
神経や細菌感染のある部分の取り残しを防ぎます。
5. 薬剤・セメント
歯の根を取り除いたあとの洗浄や、細菌の消毒のためには薬剤を使用します。
自費診療の場合、効率的に根管内の清掃ができるような薬剤や材料を、症例によって使い分けることが可能です。
精密根管治療と通常の根管治療の決定的な違いは、”制限”の有無
保険適用の治療には、保険診療のルールが存在します。
特に歯科の場合ですと、内科や外科などに比べて保険点数が大幅に低いことから、最低限の治療しかできず、使用する器具や機材等が制限されます。
制限無く治療を行うことは、治療の成功度を高めるだけでなく、再発を防ぎ、歯の寿命を延ばせるということです。
後のトラブルを防ぐ上で、必要に応じて自費診療を選ぶことの大切さが、お分かり頂けるかと思います。